2023/7/1~7/12 野津晋也「湯気の家賃」のご案内
野津晋也「湯気の家賃」
2023年7月1日(土)~12日(水)11:00~19:00 木曜休廊 最終日15:00まで
現代における絵画を模索しつつ独自の表現を追及する
野津晋也さんの個展を開催します。
近年テーマとしている
「不確定に増殖していく都市の在り方」を
「湯気」というまるではかない現象において絵画表現を試みる野津晋也さん。
2012年の横浜での個展で約2か月間にわたって公開制作を行った作品
「なりゆの記」をさらに推し進め、7mを超える作品を展示します。
「ギャラリーのガラス窓の外に広がる街の景色と展示される“街”」は
観る側にはどのように映るのでしょう。
ぜひご高覧下さい。
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【作家コメント/Statement】
「湯気の家賃」
飽きもせずコップからたちのぼる湯気を眺めている。
どうかすると、突然行方をくらますその性質が、
どうにも不思議でならず、今では愛着すら抱いている。
例えば、冬。空気が一段と冷えこんでくると湯気はいっそう明瞭にその姿をあらわす。
さらに冷えこんでゆくと、白くたちのぼるそれは大気中で凝固し、
パラパラとテーブルの上へ降り積もる。
例年のことだが、春になり、窓を開けると、
降り積もったそれはいつのまにか掻き消え、どこかへいってしまった。
夏到来。行方しれずの湯気を探すため向こうの山へ出かけた。
山頂へ近づくにつれ、気温はぐんぐん下がってゆく。
山頂付近で小休憩。リュックサックから水筒を取りだす。
キャップをひねるとうっすら白い湯気がたちのぼった。
「あっ!」と息をのむやいなや、それは風に吹き流され、
今度は麓へ向かって下降していったのだ。
この機会を逃すまいと、飲みかけの水筒を投げすて、一目散にそれを追いかけた。
ところが、山を下りるにつれ、次第に気温は上がり、
結局、山の中腹あたりまできてそれを見失ってしまった。
ふと山頂付近を仰ぎみる。
遠くの方には投げすてられた水筒の中身がこぼれ出し、
うっすらと白い湯気が揺らいでいた。
すると突然、どこからか一団の群衆がやってきて、
山を登ったり、降りたりしながら、お互いに大きな口から盛んに白いそれを吐き出し、
そして一斉に叫び立てるのだった。
「湯気発見!」
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【プロフィール/Profile】
野津晋也
1969年島根県松江市生まれ
1992年鳥取大学農学部農林総合科学科卒業
2000年東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業
2002年東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了
主な個展に、「憂鬱なる棲家」(アートギャラリー環/2002)、
「ハコマチ想」(MUSEE F/2006)、「湯気の発明」 (Resort/2012)、
「ふくら芽」(アートギャラリー環/2018)、「にせ眼ッ子」(ポルトリブレ デ・ノーヴォ/2022)。
主なグループ展として、「七人の庭」 (アートスペース羅針盤/2002)、
「庭のゆくえ」(アートスペース羅針盤/2011)、「CORRESPONDENCE LANDSCAPE 015」(工房親/2015)、
「絵画を考える -水を描く- 」 (工房親/2020)などに参加。
野津晋也HP:http://www.shinyanotsu.com/